東京高等裁判所 昭和51年(う)1292号 判決
被告人 長内義明
〔抄 録〕
これらの認定事実及び前記認定の被告人の職務権限、東京都と新組合の関係等を考え合わせると、岡本が本件自動車自体を販売会社から買い受けて供与した事実はなく、本件自動車の契約上の買主は被告人の妻絹慧であって、被告人自身が契約上販売会社に対し、直接何らかの債務を負担していると即断できないものの、本件自動車は、実質上、被告人夫婦が販売会社から共同して買い受けたもので、その代金、諸費用などは同夫婦間の了解として、夫である被告人が負担すべきはずになっていたところ、岡本において、未必的にしろ、被告人自身が事実上も財産上の利益を受けるものであることを知りながら、被告人に財産上の利益を供与するため、前記頭金、諸費用及び月賦金の一部を支払ったもので、これにより被告人は右各支払いに係る合計金四〇万八、〇一七円に相当する財産上の利益の供与を受けたものと認めることができる。とくに、被告人が右代金等を負担すべき立場にあったことは、被告人が差戻し後の当審公判において否認の供述を繰り返すなかにも自分も無関係といえない旨述べていることに徴しても明らかである。そして、以上認定の事実関係に照らせば、被告人は、岡本の右金員の支払いにより、刑法一九七条所定の賄賂を収受したものと解するのが相当である。
(石田 小瀬 南)